そんなレーンコンディションの違いもものともせず、予選24Gを通して上位を固めたのは霜出 佳奈、寺下 智香、佐藤まさみ、本間由佳梨の4名。しかし準決勝で寺下が失速し、空いたところへ女王の意地を見せた松永裕美が飛び込みます。全日本タイトルを持つ山田、そして宮城鈴菜や坂本かやらも追い上げましたが惜しくも届かず、トップシードを守り通した霜出、佐藤、本間、松永が決勝進出を果たしました。
全日本方式で行われる決勝ステップラダーは、優勝決定戦にてトップシードの選手が敗北した場合、再優勝決定戦にて勝敗が確定します。つまりトップシードの霜出は一度勝てば優勝、負けてももう一度のチャンスがあり、逆に勝ち上がって来た選手は霜出に二回勝利しなければ優勝できません。
圧倒的優位に立つトップシード・霜出への挑戦権を得るべく、まずは4位決定戦、本間と松永の対戦がスタートします。
必ず獲ることを己に課しているアベレージ部門のランキングトップは決勝進出時点で確定していましたが、優勝すればポイントと賞金も逆転トップに立てるという状況にあった松永、三冠女王という称号の為にもここは勝ちたいところ。しかし出だしから松永らしからぬ大荒れの展開で、1フレーム目から4連続ストライクの本間に大量リードを許してしまったところへきて、追い打ちの7・8フレーム連続スプリット。敗退と同時に、2年連続三冠女王の夢が潰えてしまいました。
しかし勝ち上がった本間も、佐藤との3位決定戦では3・4フレーム目でダブルを決めて以降はスプリットからのオープン、変化した左レーンに捕まりストライクとスペアが交互になるダッチマン状態に陥ってしまいスコアを伸ばせません。一方で中盤のターキーで貯金が出来た佐藤が、ノーミスを守って本間を下しました。
今年5月のグリコセブンティーンアイス杯で初優勝を果たし、「本物」と呼ばれる2勝目にして公式戦初優勝が欲しい霜出。
ルーキーイヤーに2大会連続優勝を遂げて以後、怪我の為に低迷が続き、2014年にようやく1勝を挙げましたがそこからまたしばらく優勝戦線から遠ざかっていた佐藤。どちらもそれぞれの勝ちたい理由があり、負けていい理由など持っている訳もなく。しかもプロならば喉から手が出るほど欲しい全日本という最大のタイトルをかけた最後の戦いが始まりました。
滑り出しの第1フレームは霜出がストライクに対し、佐藤はスペア。しかし続く2フレーム目は両者オープンとなり、ほぼ互角。しかし霜出がその後も4フレーム目、8フレーム目とオープンを連発し、我慢のボウリングに徹した佐藤に1勝を取られます。
これでお互い後がなくなった再優勝決定戦、またしても大苦戦の展開なるかと思われましたが、一転して佐藤がダブルで滑り出し、霜出も2フレーム目から4連続ストライクに成功。霜出がリードを取ってゲームは中盤へと進みます。
4年ぶりの優勝は欲しい、もちろん全日本のタイトルは言うまでもなく。けれど「今は一投一投を大事に」と意識を変え、過去優勝した時のイメージを思い出しながら丁寧に投げることに集中したという佐藤。流れが変わったのは霜出のストライクが途切れた6フレーム目でした。
肩の力が抜けた佐藤の投球はストライクを繋ぎ、先を行く霜出をじりじりと追い上げます。霜出も7・8フレーム目にダブルを決め、差を詰めてくる佐藤から逃げようとしますが、大事な9フレーム目で10番ピンに嫌われスペアとしてしまいます。
勝利するにはパンチアウトが絶対必要、その上で佐藤のミスを待たねばならないところに追い込まれた霜出でしたが、続く10フレーム1投目も9番ピンを残すアンラッキーな9本カウント。続いて投げた佐藤の10フレーム2投目、ストライクが決まった時点で勝利が確定しました。
いつも相談に乗ってもらったりと親しくしている松永の祝福を受けて、これまで3度の優勝でも涙はなかった佐藤の目に涙が滲みます。
自身プロ入り10年目、平成最後にして第50回大会と記念盛りだくさんの全日本タイトル、応援に駆けつけてくれた家族に贈る少し早めのクリスマスプレゼントとなりました!
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